パリの恋人たち

 ルイ・ガレル監督、主演のラブストーリーは、お気に入りの小説のように愛おしい。

【STORY】舞台はパリ。ジャーナリストの青年アベルは、3年間同居してきた恋人マリアンヌから、ある朝、妊娠を告げられ喜びます。が、それもつかの間、父親は友人のポールであることから別れを切り出されます。

数年後、アベルはポールの葬儀でマリアンヌと再会。同時に、ポールの妹エヴから熱い思いを告白され、さらに、マリアンヌの息子ジョゼフから、驚くことを聞かされます。2人の女性と子供に翻弄されるアベルのアムールの行く先は…

 なんと言っても、冒頭からひどいフラれ方をする傷心の主人公アベルを演じ、初監督を務めたルイ・ガレルのセンスが光ります。王道の切なさにユーモアを加え、パリの恋愛スタイルをリアルに楽しませてくれます!

 人気もキャリアもある俳優ルイ・ガレルは、自身が演じるキャラクターを、全くかっこよく描いていません。好きな人に言われたら何でも受け入れてしまう、恋人の浮気にも怒らないその青年は、イケメンなのに情けない!荷物をまとめて、女性の家を行ったり来たりする姿は、気の毒なのに笑ってしまいます。

 オフィシャルインタビューによると、主人公アベルは、サイレント映画時代の名優バスター・キートンのようなイメージで描いたそう。例えば、自分の頭上に鉢植えが落ちて来ても、何だよ!?と訝るのでなく「けがしなくてよかった」と思うようなキャラクター。青年アベルはラブストーリー史上、愛されキャラクターとして貴重な存在なのです。

 そんな彼を振り回すマリアンヌ役は、フランスのミューズ、レティシア・カスタ。1978年生まれ。大人の美貌を持ち仕事のスキルが高く、隙がない女性を華麗に演じています。そして恋人に見せる笑顔と甘え方がチャーミング。素直になれないために、事態をややこしくしていきます。

 そして初恋に奮闘するエヴは、リリー=ローズ・デップ。素直過ぎて誰も止められない恋心で、見事に三角関係をかき混ぜていきます。この作品で、セザール賞有望若手女優賞にノミネート、今後ますます注目です。登場人物たちの「心の声」にも、本音とユーモアがたっぷり!こんがらがった恋の行方は劇場で。    (tomon)

『パリの恋人たち』 12月13日(金) Bunkamuraル・シネマほか全国公開

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