身近なアパレルでは、企業とアーティストがコラボレーションしたグラフィックTシャツ欲しさに長蛇の列ができ、それが転売目的だったり・・・。フェルメールを見てもアンディ・ウォーホルを見ても、「これいくらだろう?」なんて頭によぎったら注意信号かも!? 。1億5000万円の値がついた自身の絵を、落札の瞬間に細断したバンクシーのニュース映像や、ジェフ・クーンズの「ステンレス製のウサギの彫刻」が、存命アーティスト史上最高額100億円!で落札されたり、アート界はざわついています。 世界各地でアートフェアやオークションが行われ、株や不動産のように投機の対象となっているアートは、 有象無象の強者が世界から熱い視線を送られている。 なぜ、いつから現代美術が商品となり、億の値段がつくようになったのか・・・。『マイ・アーキテクト・ルイスカーンを探して』のナサニエル・カーン監督が、美術界の有力者たちに疑問を投げかけながら、アートとお金の関係を探るドキュメンタリーです。
舞台はNY。あるコレクターから価値あるコレクションの出品が決まり、サザビーズのアート責任者エイミーはオークション成功に意欲満々。一方、作品が出品され、高値が予想されるアーティストたちは複雑な表情を見せます。成功を収めるジェフ・クーンズや、世間から忘れ去られたラリー・プーンズなどが、盛り上がるアート市場に対しそれぞれの意見を投げ返してきます。サザビーズで開催される秋のオークションに向けて、スケジュールを時間軸に、渦中にいる超一流アーティスト本人、コレクター、ギャラリスト、批評家など専門家が続々登場し持論を展開します。株化の変動のように、アート作品にトレンドができている理由や、おすすめ作品紹介など、大イベント直前だからかアート責任者エイミーのテンションが高く、押しが強いナビゲーションには圧倒されます!
「美術館に自分の作品収めるのが夢だ」と語るアーティストの声は、時に切なく響きます。美術館はまるで墓場だと語るエイミーに打ちのめされながらも、うなづけることも・・・。 中でもバスキアと交流があった友人、ジョージ・コントのアトリエでのシーンがその1つ。大きなキャンバスに描きながら、生前のバスキアの苦悩を赤裸々に語って行きます。「バスキアが生きていたら、そんな値段がつくか?」と吐き捨てるような一言は、重く残りました。そして、魅力的なキャンバスの絵を、やり直すと言って白く塗りつぶしていく姿は印象深いものがあります。「アートのお値段て何だよ!」そんな思いを抱きます。 なんだかアートの世界がおかしいな、と思っていた方も、オークションの裏舞台から見えてくる、アートと自分の関係をぜひ確認してみてください! (tomon)
『アートのお値段』(原題: THE PRICE OF EVERYTHING)
2019年8月17日(土)渋谷・ユーロスペース他全国順次公開
監督:ナサニエル・カーン
出演:ラリー・プーンズ、ジェフ・クーンズ、エイミー・カペラッツォ、ステファン・エドリス、ジェリー・サルツ、シモン・デ・プリ、ジョージ・コンド、ジデカ・アクーニーリ・クロスビー、マリリン・ミンター、ゲルハルト・リヒター他
2018年/アメリカ/98分/英語/DCP/カラー/英語題:THE PRICE OF EVERYTHING/配給:ユーロスペース